『がっこうぐらし!』由紀とめぐねえの約束
今月、原作単行本の最終巻である12巻が発売され、さらに『きらファン』でピックアップ召喚が開催されるなど、僕の周辺でかなり話題豊富だった『がっこうぐらし!』。
そこで今回は、そんな『がっこうぐらし!』について書いていこうと思います。
ただ『がっこうぐらし!』は原作とアニメでは話の流れが異なっています。そのため、今回は僕自身がアニメをきっかけに作品に触れたという理由から、アニメ版の方を対象にしようと考えています。
そして、今回取り上げたい内容は、僕がアニメ『がっこうぐらし!』の中で特に気に入っている2つのシーンです。
めぐねえって誰ですか?
まず1つ目は、6話で美紀が「めぐねえって誰ですか?」と口にするシーン。
めぐねえのことを見えていない美紀が由紀に問いかけたこの場面ですが、個人的にこのシーンの素晴らしかった点はBGMによる演出です。
由紀に音楽室へと案内された美紀。音楽室に入った由紀はラジカセで音楽をかけ、この明るい音楽がそのままBGMとなります。
そして、そのラジカセを由紀はめぐねえに手渡します...。
誰もいないにもかかわらず、1人「めぐねえ」という見えない存在と会話する由紀。そんな由紀を美紀は不思議そうな目で見つめます。すると、徐々に不穏な感じへと変わっていくBGM。そして、美紀は1人喋っている由紀に対して問います。
「めぐねえって誰ですか?」と...。
その言葉を区切りに、教室の描写も由紀が見ている幻覚から美紀たちが見ている現実へと戻ります。そして鳴り止むBGM。
すると、由紀の足下には壊れたラジカセが...。
この「めぐねえって誰ですか」という言葉によって崩壊しかける由紀の精神。それは狂っていくBGMや由紀の目からもよく伝わってきました。
「めぐねえ」は実はすでに存在していなかったということと、その事実が由紀の精神に与える多大な影響。これらをBGMと合わせて、より恐怖感を与えるようにした、この演出は本当に衝撃的でした。
あと、このシーンで由紀は美紀に「先輩」と呼ばれますが、その時「ガシャン!」という音が響きます。初めそれは、由紀が「先輩」と呼ばれたことに嬉しさのあまり衝撃を受けたという演出かと思われましたが、それだけではなく、めぐねえに手渡したラジカセが床に落ちて壊れた音も表現していたと考えられます。
めぐねえの事実と由紀の精神崩壊の恐怖を感じさせられた、このシーンの演出は本当に良くできていたと思いました。
この先何があっても、その笑顔を忘れないで
そして2つ目は、11話で回想された由紀とめぐねえの約束のシーン。
このシーンは、本当に泣けます。何度見返しても泣いてしまいます。
この約束には、由紀が幻覚を見ている本当の理由が込められていました。
僕もそうですが、初めて『がっこうぐらし!』を見た時はおそらく誰しもがこう思うでしょう。
由紀は奴ら(ゾンビ)が現れ、その現実から逃げるために幻覚を見ていると...。
しかし、それは間違いでした。
この回想シーンで、めぐねえは由紀にこんな言葉を伝えます。
「これから先何があっても、その笑顔を忘れないで」と...。
これが、由紀とめぐねえが交わした約束です。
突然あらわれた奴ら(ゾンビ)に精神的にも大きく傷ついてしまった由紀たち。しかし、めぐねえはもちろん、胡桃やりーさんにとって由紀の笑顔は心の支えになっていました。
だからこそ、めぐねえは由紀に「その笑顔を忘れないで」とお願いします。
そして、由紀はこの約束を守るために幻覚を見ているのだと、僕は思います。
なぜなら、めぐねえが死んでしまったという事実を認識すれば、笑顔でいることができなくなる、つまり約束を守れなくなるからです。
さらに、由紀はゾンビが現れた直後は泣いてばかりだったり、机でバリケードを作ったりと、状況を理解している描写がいくつか確認できます。
しかし、ゾンビの出現に大好きだっためぐねえの死が加われば、さすがの由紀も笑顔を保つことはできません。めぐねえの死を認識してしまえば、めぐねえとの約束を守ることはできなくなる。だから、由紀は無意識のうちに幻覚を見ることで、めぐねえの存在を維持し、約束を守り抜こうとしたのでしょう。
由紀が幻を見るのは現実からの逃避という後ろ向きな理由ではなく、めぐねえと交わした約束を守り、胡桃やりーさんに元気を与えるという前向きな理由だったと考えられます。
だからこそ、11話の回想はとても素敵で感動するシーンに感じられるのです。
由紀を信頼し約束をしためぐねえと、その約束を何よりも優先した由紀。2人の尊すぎる関係性も感じられる最高のシーンでもありますね。
今回は以上です。
みなさんもぜひ、『がっこうぐらし!』を見返してみてください!